川崎市で、スクールバスを待っている小学生たちを次々に刺し、18人を傷つけ、2人を殺害すると言う痛ましい事件が起こりました。
私のいた日本人学校では、生徒の90%以上がスクールバスで通学しており、「もしも自分の教え子が同じような事件に巻き込まれていたら」と考えると、ゾッとしました。
日本人学校にお子さんを通わせている親御さんや、これから日本人学校で教師として働きたいと思っている方の中には、日本人学校がどのような安全への取り組みを行っているのか、気になる方もいるかもしれません。
私が実際に勤めた2校の日本人学校の、安全への取り組みを紹介します。
過去に起きた日本人学校がらみの事件
2004年、ソウル日本人学校の幼稚園児2名が、スクールバスから降りたところを待ち伏せしていた韓国人の男に襲われると言う言う事件が起こりました。
事件の経緯は、以下の通り。
①犯人は、事件の前日に飲食店で、日本語を話す3人と喧嘩になっていた
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』ソウル日本人学校園児襲撃事件
②日本人への復讐を計画
③斧を購入
④日本人学校のスクールバスを待ち伏せし、下車してきた幼稚園児2名を斧で襲う
⑤うち1人が頭蓋骨陥没骨折
犯人の男は、その場で警察に捕まり、後から幼稚園児が怪我を負っていたことを聞かされたらしいのですが、その時の反応が
「へぇー子供が怪我したのか でも日本人でしょ」
だと言うのだから、恐ろしいものです。
このように、海外で暮らしていると『日本人だから』と言うだけで、ターゲットにされ、危険な目に遭う可能性は、決してゼロではありません。
では、日本人学校の内部では、そういった危険に対して、どのような対策をとり、子どもたちにはどのような教育をしているのでしょうか。
24時間体制のセキュリティ
僕の知る限り、世界中すべての日本人学校は、丈夫で高い塀に囲まれていて、さらに、入り口には現地のセキュリティスタッフが24時間体制で滞在しており、部外者が簡単には中に入れないようになっています。
また、地元警察との連携も強固で、必要に応じて日本人の子どもたちを守ってくれています。
セキュリティスタッフたちは、定期的に訓練をしており、不審者の侵入や、火災発生時の消火活動など、不測の事態に備えています。
余談ですが、このセキュリティスタッフが24時間学校の扉を管理してくれているおかげで(いるせいで、とも言えますが)、先生たちが好きな時に働くことができ、結果的に『毎日、早朝から日付が変わった深夜まで』誰かしらの先生が職員室で働くことができるという、職場のブラック化を助長していました。
子どもたちの不審者対策の避難訓練
日本では、年に2回以上の避難訓練が義務付けられていますが、日本人学校でも同様に避難訓練を行います。
(地震の発生しない国でも、地震対策の避難訓練をしています)
僕の勤務校では、1回は地震対策、そして2回の不審者対策で、計3回の避難訓練を行っていました。
校内では、日本人だけではなく、様々な国籍の人たちが勤務をしていましたので、「日本語」「英語」さらに「現地語」の3ヶ国語で放送が入ります。
国内の安全神話がまだまだ支持されている日本と違い、海外での生活で防衛意識が高まっている子どもたちが多く、不審者対策の避難訓練では、学校全体として、真剣かつスピーディーな印象がありました。
スクールバス事故シュミレーション
日本人学校の特徴として、ほとんどの生徒がスクールバスを使って登校している、と言う点があります。
大規模校になると、数十台のスクールバスを一斉に送り出し、市内のそれぞれのマンションまで子どもたちを送り届けるわけですが、大小問わず、事故は発生するものです。
学校としては、大きな交通事故が発生した際に、迅速に状況を把握し、対応ができるよう、安全対策マニュアルができており、定期的に教員のみのシュミレーションを行っていました。
※マニュアルの内容が、不審者などに悪用される可能性もあると言われているため、このブログで多くを紹介することはできません。
大まかな流れは、「事故発生現場と病院」「校内で情報収集と発信」の2つのグループに分かれ、管理職や現地語を扱える人材がうまく分かれるように、事前に役割分担がされています。
事故は起きないに越したことはないですが、巻き込まれる可能性も秘めているため、こういった準備を入念にしておくが、とても重要です。
まとめ
日本人学校では、日本と同じレベル、もしくはそれ以上の水準で安全への取り組みがなされています。
しかし、川崎やソウルの事件のように、登下校時の安全確保はまだまだ課題があるのもまた事実です。
子どもたちが安心して学校へ通えるよう、教師と保護者、現地スタッフと住民が協力し合い、セキュリティレベルを高めていくことが大切です。